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生きる/黒澤明/1952


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終始こういう顔をしてる。


午前10時の映画祭で、500円で見れました^^u-nextに加入して1800円分見れるので、実質無料です^^黒澤明の作品は、「羅生門」に次いで2作目。ネタバレあり!

 

 

 

政府への批判

 

 

 「生きる」は「生きるとはどういうことか」というメッセージとは別に、役所の制度(政府)への批判も結構占めていました。公園の建設についていろいろ理由をつけて別の課へどんどん回して最後は元に戻ってくしーんは、ありそうでなくておもしろかった。

物語の最初は、主人公のワタナベさんが「生きていない」人間なので、この人について語ってもしょうがない、とナレーションに見放されてるのが、面白い。主人公が「こいつは死んだも同然だから」って言われてる映画って、なかなかないですよね笑 

役所とそこに勤める人間については、役所の女の子のギャグが一言で表してます。「『休めないの?あなたがいないとみんなが困るのかしら』『いや、僕がいなくても大丈夫ということを確認すると困るんだ』」(うろ覚え)みたいな内容です。

 

主人公ワタナベさん

 

 この映画のすごさは、主人公演じる志村喬さんでかいなあとわかりました。んーどうすごいかというと私の語彙力では伝えられないのですけど、「ザ・演技」という感じ。「この人演技していないみたいに自然だなあ」じゃなくて、舞台の演技みたいに、「すごい迫力だなあ」って感じです。終始、この人はもうすぐ死んで、だから死に物狂いで生きているんだと納得するんです。

 私が序盤早くも泣いてしまったシーンは、胃がんがわかって家にいると、太宰治似の息子が「お父さんお父さん」と叫んで、父は急いで階段へ向かうが、その後「もう寝るよ。戸締りお願い」に続いたのに嘆いて階段でうつむき、息子を心で呼びかけるシーン。すごく上手い演出だと思ったし、これは、もう今まで見た映画の中でもトップクラスの「泣きポイント」です。

結局二人は最後まで打ち解けません。葬儀の場で、「お父さんは胃がんのこと知ってたんですか」と聞かれ、「いえ、知ってたら私に言うと思います。知らなかったことが、父にとって救いでした」みたいなことを言うシーン。息子は父との関係が救いようなく悪化してることに気づいてすらいないんですね。それに続く言葉も、事実とは正反対な(本当は父のことを全然わかっていなかった)だけ、愛のない定型文のように響きます。

この物語、結構ストレートで、お泣かせ、なようでこういうところが他の平凡な映画とは別物です。だってワタナベさん、いくら最後の仕事で今までの無意味な30年間を取り返したとしても、やっぱり息子が一番だったはずです。彼が一番望んでいたのは、息子との関係の修復だったはず。最後の葬式の「なんで僕に言ってくれなかったんだ・・・」というシーンで救いはありますが、やはり一番大事だったことは死に物ぐるいでも取り戻せなかった。息子との関係が悪くなったのは、おそらく役所の女の子が指摘する通り、役所で無意味に働くことを心の奥で息子のせいにしていたからでしょう。こーゆうところがリアルですね。

 

 

印象深いシーン


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ブランコシーン

 

 映画についていろいろ不満があっても、これ!っていうシーンが一つでもあるか、ないかって一番重要だと思います。やっぱり一番印象的だったのは、ワタナベさんが公園で死ぬ前、雪の中でブランコに乗りながら「いのち短し恋せよ少女」を歌うシーン。ここを見て、これだけで映画館で見てよかったなあと思いました。あと、葬式のあとワタナベさんについてみんなが語るシーンも印象的です。今までこういうのってなかったなあって。30分くらいあります。

この映画は単に「余命宣告を受けた中年男性が今までの人生を悔やみ、偉業を成し遂げて死ぬ」みたいなのとは違うんだろなあって思うのが、そういうシーンのおかげ。一歩間違えれば、この手の話って、説教くさくなると思うんです。結構ギリギリをいってると私は思いました。この映画を「泣かせ」映画とか「教訓的」映画とかって解釈して避けてしまう場面も結構ありました。でも、見たのが中年以降だったら、この映画ってかなりぐさっとくると思います。映画で身につまされるという経験はいくらでもあるけど、作者は説教したいわけじゃないですよね。ワタナベさんが死ぬ前の半年で命がけで生きても、ちゃんと成し遂げられたのは公園建設だけです。もちろんすごいことだったけど、息子との関係もダメ、役所の人間は変わらない、唯一良心のありそうな人も、声を上げるのをやめてまた仕事を始める場面が象徴的です。(彼も、渡辺さんみたいな、最後を遂げるんでしょうか)一人が死に物狂いになっても、人の気持ちや、組織は、なかなか変わらない。でも最後の公園のシーンを見れば、生きることは素晴らしいってなんだか思います。