ベティ・サイズモア/2000


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tsutayaの発掘良品!楽しそうなパッケージだったので選びました。カンヌ国際映画祭脚本賞らしいです!確かに、心理ドラマとしても、コメディとしても、楽しめましたし、濃密でした。

考察っぽい感想(ネタバレ!)

ベティ

ベティがドラマと現実の見分けがつかなくなったにはいつなんでしょうか?夫の殺害シーンが引き金を引いたのではあるのでしょうが、なんか気になる点が。ベティがカフェテリアの同僚に看護婦になるためのお金をもらった際、「できのいい旦那をもったせいでなかなかなれないんでしょ」といったように聞こえたのですが・・(?)。「悪い」だったのかな?吹き替えで見たので、曖昧です。旦那は浮気をし、妻にひどく当たる最悪な人間。ベティの「愛がすべて」をけなし、浮気相手の「上客」が来るから電話しないでくれとベティに浮気を示唆する。また、デヴィッドのボードをもらった時、「こんなのどこで手に入れたの」とベティがいうと、「インターネットに決まってるじゃない」と答えた時のベティの腑に落ちないという微妙な表情もきになります。すでに「愛がすべて」の世界にはいっていきかけ?だったのではないでしょおか。理想とは正反対の夫に失望して、逆のことを言っていたとか?でもこれは、同僚がなんと言っていたかで全然違いますね。もしくは、皮肉で「できのいい」と言っていたのか・・・。謎。まだテレビドラマと認識しているというのは、夫との会話や親友にビデオを借りているシーンでわかりますが、このころから自分の欲求をそのまま口にしてしまうという癖(?)くらいはあったのかもしれません。

すみません。ここら辺は間違った解釈かもしれないです。

思い込みってこわい!

 ベティはデヴィッドを昔のフィアンセと思い込んでしまいます。それと同じことが、いろんな人におこっているのが面白いです。殺し屋の父チャーリーや新聞記者はベティをいわゆる神化し神聖で純粋で美しいものと現実以上に考えてしまう様子がユーモアで語られます。ジョージも同様です。恋は盲目とも言いますが、ある相手をすごく素晴らしいものと勝手に想像して、失望するというのはほんとによくありますね。個人的に自分もそういうとこあります・・・笑。相手にとっても迷惑ですから、そういうのって、よくないですよね。ネットの仮想カレカノやアイドルというのは、その期待を満たしてくれる存在だから、現実よりもその世界に没頭していく人は多いです。そういうファンって大好きな芸能人がイメージに合わなかったり、期待はずれなことをしたら、すごく怒りますよね。まったく理不尽な話ではありますが・・・。

大人になれない子供

 キャラクターで印象的だったのは、殺し屋の息子。ネイティブアメリカンに対する悪口に怒りを燃やし、「殺人を犯すのは魂のかけたような人間だ」というベティの親に対し、「殺人は自然な行為だ。神だって殺しあう」と反発する。すぐカッとしてしまうザ・若者ですが、言っていることは妙にまともで、ベティやチャーリーとの対比になっています。彼らは大人ですが、「あったらいいな」っていう夢を抱きますね。彼らのように非現実に没頭してしまうのは、実はたくさん現実で理想と違う、嫌な体験をした大人なのではないでしょうか。ベティは昔から、素敵な結婚を夢見ていただろうに、それがことごとく裏切られ、しかも夫は惨殺されるという現実に耐えられず、逃避してしまったのだ。チャーリーも最後の仕事を、プライドにかけて美しく終わらせたいと願っていたのに、息子の失態でうまくいきそうにないという現実から逃れるためという理由もあってか、ベティを最後の標的としてふさわしい女と思い込んでしまいます。すごく現実的な息子とは、対照的ですね。

ラスト

 ラストは登場人物が夢から目覚めて新たな一歩を踏み出していく感じです。殺し屋の父は息子が殺されたことで、ようやくただのつまらない昼メロ(とそれに没頭していたベティ、そのベティを理想の女性と思い込んでしまった自分自身)が原因で、息子が死んでしまったのだと気づきます。ベティもですね。うまい感じに、チャーリーの言葉でまとまった感じですけど、彼が憧れの女性ベティと部屋にこもってよくわかんない愛の言葉(?)を長々と言ったりしなければ、息子は死ななかったかもしれないですよね。テレビ見てた息子も悪いですけど、チャーリーもいれば、不意を突くことはできなかったはずです。そう考えると、夢から覚めない大人、思い込みってすごく怖いと思いました。